イスラム教とISの関係をとにかくわかりやすく解説してみた

国際
覆面マン

近年、世界中のあちこちでほぼ毎日と言っていいほど、テロリストによる残酷な事件が起きています。
誰がテロ活動をしているのか?
日本にもテロはやってくるのか?
いまいち情報も不透明な分不気味ですよね・・・

下の画像はここ10年のテロ件数の推移です。

テロリズムによる死者数の推移 (2)

ご覧のとおり、2013→2014年でテロ攻撃件数が35%増、死者数に至っては80%増の約3万2千人となっています。
テロの恐怖は、もはや世界中どこにいても降りかかるのでしょうか・・・

テロ行為を行う組織で今一番戦力をもっているのは、「IS」というイスラム教の過激派組織と言われています。
ただ、そういった「イスラム教」の「過激派」がどうしてそんな凶悪なテロ行為をするのか、よくわからないですよね。
そして、ISという組織の名前はわかるけど、曖昧なイメージしかない方が多いと思います。
また、日本人には今後どんな危害が及ぶのかも、あまり実感が湧かないかもしれません。

そこで今回は、
① イスラム教ってそもそも危ない宗教なの?
② ISってそもそもどんな組織なの?
③ 特に訓練もしてないし、テロからどうやって身を守ればいい?
これらについて考えてみようと思います。

<h4>イスラム教ってそもそも危ない宗教なの?</h4>

  一言でいうと、本来は「危ない宗教」ではありません。
「危ない宗教」を他人に危害を加えるような思想を植え付け、世界の支配を目的とするものと定義するならば、イスラム教は違います。
イスラム教を信仰している人(ムスリムという)の人口は2009年推計で約16億人で、世界人口68億人の22.9%を占めています。(社会実情データ語録 http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/9034.html)
もしイスラム教が危険な宗教だったならば、今のいままでに世界中のムスリムが暴動を起こして世界を支配しようとしていたでしょう。

イスラム教の経典「コーラン」には、ムスリムの義務として六信五行というルールのようなものが定められており、彼らはこのルールに従って平和な日常生活を送っています。
例えば、
「礼拝」⋯1日に5回、定められた時間にサウジアラビアのカーバ神殿という場所に向かって礼拝をする。
「断食」⋯1年のうち1か月、日が沈むまで飲食をしない。
などです。
彼らの生活は、日本人からすればかなり非日常的なことばかりですが、ムスリムからすれば私たちの生活も違和感を覚えることばかりでしょうから、お互いさまです。

では、世界中でテロを起こしているイスラム過激派は、大多数の平和なムスリムとどこが違うのでしょうか。
それは、イスラム教独特の思想「ジハード」を推し進めるか否か、という所が大きいです。
「ジハード」⋯イスラム教徒が異教徒と戦うこと
これを、「自分たちと違う考えをもつ人なら攻撃してもよい」と解釈し、実際に武器を用いて攻撃しに行くのがイスラム過激派です。
彼らはムスリムの中でも少数派であり、武力を用いなければ世間に存在を示すことができません。

〈ISの他に有名なイスラム過激派組織〉
「タリバン」⋯1979年、アフガニスタンに侵攻してきたロシア(当時はソ連)に対抗するため現地のムスリムを中心に立ち上がった地域密着型の過激派

「アルカイダ」⋯明確な機構を持たない、イスラム主義(イスラム法に基づく国家の建設を目指す思想)をもとにした国際ネットワーク。世界中のイスラム過激派組織をつなぐ役割をもっている。

<h4>ISってそもそもどんな組織なの?</h4>

私たちがもつISのイメージは、人質と引き換えに無茶な請求をする、得体のしれない過激派組織、というところでしょうか。
それだけでは他の過激派と変わらないので、少し歴史的に眺めてみます。

IS の出身地であるイラクでは、もともと少数派のスンニ派が支配的地位にあり、フセイン政権による独裁体制が敷かれていました。
少数派のスンニ派には優遇措置がおかれ、他方で80%を占める多数派であるシーア派やクルド人には不利な社会構造になっていました。

事の発端は、アメリカが2003年のイラク戦争で当時のフセイン政権を打倒し、米軍による占領統治を行ったことです。
このとき米軍は、
ⅰ)スンニ派の支配的・専門的職業(政治家、公務員、教員、医師)に就いていた人々の大量解雇
ⅱ)50万人にのぼる軍人たちを武装解除せずに一斉解雇
という政策を実施しました。
これらの政策は、スンニ派の人々の生活基盤を根底から覆す、極端なもので、当然スンニ派の人々の間では不満が募ります。
そして米軍による占領統治が終わったのち、選挙によって「民主的な」シーア派の政権が生まれました。
この政権は、これまでのお返しとばかりにスンニ派に不利な政策を実施したことから、スンニ派の元軍人や元諜報機関員は不満を武力反乱という形で表に出しました。
この反乱は、突然の生活の悪化に不満を募らせていたスンニ派の現地住民からの支持も受け、発展していきます。

内乱に手を焼いた米軍は、シーア派とスンニ派を和解させることで内乱を鎮めようと模索し、現地のスンニ派の長老と手を組むことで過激派を追い出し、一時的な平和が訪れます。

ところが、米軍が完全に撤退したのち、シーア派政権はスンニ派に対する圧政を再開したため、スンニ派からの反発は度重なる国内テロという形で表れました。

当時イラクで勢力を広げつつあったISは、2014年6月29日、他の武装勢力と結託し、軍事的な行動によってイラク北部の主要都市モスルを占領し、さらに南下して占領地域を広げていきました。

(ピンクはISの主張する支配領域、赤は実際の支配領域)
(2014年6月28日時点 イスラム国の支配地域の拡大がわかる地図
http://matome.naver.jp/odai/2141309571052957801/2141309783356637803)

イラク内戦のきっかけを作ったのは紛れもなくアメリカですが、一時の平和を崩すことになるスンニ派への圧政を行ったのはシーア派政権でした。
そこでアメリカはイラク政府を強く非難して、退陣するか、イラク国家を再び分裂させるか、の選択を迫ります。
追い込まれたシーア派政権の状況を見透かすように、2014年6月29日、ISは「カリフ(イスラム教の創始者ムハンマドの後継者)を指導者とするイスラム国家の樹立を宣言しました。
もちろん、国際社会から認められた国家ではなく、実際にはイラクとシリアの国土の一部を武力支配しているにすぎませんが、世界中から支持者が集まって一定の規模をもった勢力となっているため、いまや軽視することのできない実力組織です。

(2015年5月時点の支配領域 同 http://matome.naver.jp/odai/2141309571052957801)

<h4>特に訓練もしてないし、テロからどうやって身を守ればいい?</h4>

2015年1月には、ISによって日本人ジャーナリスト二人が人質として交渉の道具にされ、効果的な方策がとられないまま二人とも殺害されてしまいました。

どうして日本人が交渉の道具になったのでしょうか。

それは、同じ月に安倍首相が中東を歴訪し、「テロと戦う国を支援する」ことを示し、そのために2億ドルの金銭的支援を約束したことによります。
ISはこの「2億ドル支援」に逆上し、日本を標的にすることの口実に挙げ、今後はアメリカなどと連携をとる限り日本人もテロのターゲットになることを宣言しています。

⋯なかなか怖い宣言ですよね。
ただ、ISの言葉に縮こまっていてはそれこそ相手の思うつぼです。
2013年の海外渡航者約1700万人当たりの死亡者の割合は0.0035%で、そのうち死亡要員ランキングでテロによる死亡は1.6%で第6位です。(外務省 海外邦人援護統計の公表)
つまり、「海外でテロに遭って死ぬ」確率はよっぽど危険地に行かない限り格段に低いことがわかります。

また、菅原出氏は『「イスラム国」と「恐怖の輸出」』でテロに遭うリスクを下げる方策を挙げています。

ⅰ)渡航する場所によって脅威の形態は異なるので、渡航前に地域の治安状況、紛争の有無など事前のチェックを必ずすること。

(2015/12/15 外務省 海外安全ホームページ http://www.anzen.mofa.go.jp/ より)

ⅱ)活動エリア内に、テロのターゲットになりうる施設がどこにどれだけあるのか、どこの警備が脆弱なのかを認識する。
テロのターゲットとしては、
・ISの敵である特定の個人や団体、イスラエルやユダヤ教関連の施設
・ISが敵視する国の政府機関、政府を象徴する建物、軍や治安機関の施設
・駅、空港、大型ショッピングセンター、ホテル、カフェ、レストラン、など不特定多数の人が集まり、出入りが容易な場所

ⅲ)常に自分も狙われる可能性があるという意識をもつ
→銃をもった人間、挙動不審な人間がいないかを気にしながら行動する。
 手放しで身の安全を現地のガイドや同行人に任せたりしない。


結局は、「リスクを最小限に抑え、自分の身は自分で守る」ことに尽きるということでしょう。

何となく、イスラム教とISについて理解を深めることはできたでしょうか?
今後、IS等の過激派が日本という国家に対して直接危害を与える方法としては、少数によるテロ行為が最も起こる可能性が高いです。
「偶然現場に居合わせないようにする」のはかなり困難な話ですが、1億3千万分の数十人になる確率に怯えても仕方がないので、普段通りの生活を送っていただければ特に問題はないと思います。

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