一回も運転していない原発がテーマパークになったってホント!?

総合
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 日本では、現在高速増殖炉もんじゅ※の廃炉を巡って議論がされています。今回は同じ高速増殖炉であり、もんじゅと同じ時期に稼働するはずだったドイツの原発が、親子で楽しめる素敵なテーマパークに姿を変えたという、一見信じられないようなお話を取り上げたいと思います。

※原発の一種。発電しながら使った以上の燃料を生み出す原子炉。
日本ではもんじゅが有名だが、20年間トラブル続きで稼働できず現在廃炉も検討されている。

 毎年60万人以上が訪れるドイツのテーマパーク、「ワンダーランド・カルカー」。ドイツの原発が人々に愛されるテーマパークになるまでには、ドイツ国内での脱原発の動きの高まりや、世界の国々の高速増殖炉の研究からの撤退といった経緯がありました。そうした過程を追いながら、なぜドイツの原発がテーマパークへと姿を変えていったのかを探ってみることにしましょう。

世界各国の高速増殖炉研究の現状

 これまで世界の国々では、普通の原発と並行して高速増殖炉の研究開発が進められていきました。発電しながら使った以上の燃料を生み出せる原子炉であり、それが実現すれば燃料資源には困らなくなると期待されていたので、日本はもちろん、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ロシアなどはこぞって高速増殖炉の研究開発に努めました。

 しかし、そのほとんどの国で高速増殖炉の技術的な事故が相次ぎ、まともに運転できなくなることが多発、研究開発を進めるのが困難になりました。実現の見込みが立たなくなり経済的な面から研究を断念する国や、事故時の影響が普通の原発よりも深刻なことから、安全性を考えて計画をやむなく中止した国もありました。

 現在でも開発を進めているのはロシア、インド、中国で、日本もフランスと共同で開発を続ける見込みです。

中央制御室がレストラン、原子炉建屋がホテル!?ドイツの高速増殖炉の新たな人生

 ドイツも世界各国と同じように、高速増殖炉の研究をしていましたが、イギリスやフランスよりも早く1991年には研究を断念しています。

 高速増殖炉の特徴として、普通の原発よりも設計上地震に弱く危険性が高いことなどが問題とされ、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故を背景に脱原発の声が高まり、カルカーの運転中止を求める声が強く主張されるようになりました。

 カルカーは当時の日本円でおよそ7200億円もの予算を投入して完成され、1985年にはすでに完成している状態でした。そのためカルカーを巡っては「いまやめてしまうのはもったいない」、「いや、今やめておけばこれ以上の損はしなくて済む」といった議論がなされ、ついに1991年、一度も稼働することなく政府によって計画の中止が決定されました。

 その4年後の1995年に、オランダの実業家によって原子炉施設が買い取られ、カルカーは「ワンダーランド・カルカー」というテーマパークとして生まれ変わることになります。

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http://www.fhshh.com/wunderland-kalkar-the-park-of-wonders-from-a-former-nuclear-power-plant-photos.html#

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http://www.dualwarez.com/2014/05/nuclear-plant-transformed-into.html

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https://www.its.de/pibe-media/its/hotel/DM9952_W16_1.jpg?w=534&h=356

 原発の建物を可能な限りそのまま活かすことで、なんと冷却塔の外壁がクライミングウォールになり、中は空中ブランコに! 他にも中央制御室がレストラン、タービン室がトイレ、消防隊室がボウリング場、原子炉建屋はホテルへと変貌を遂げました。今では、毎年60万人以上が訪れ、忙しい時期には500人以上が雇用されるなど、地元の経済の活性化、そして雇用の安定化に貢献しています。

日本とドイツ、違いは決断力にある?

 これまで日本では、もんじゅを存続し再稼働か、あるいは廃炉にするかの決断がされず、20年も停止したまま多額の維持費が消費されるという状況が続いてきました。

 ドイツのカルカーを巡る議論と同じように、続けるべき、あるいは廃炉にすべきということで意見が分かれていましたが、今年ようやく、政府は年内までに結論を出すとして、もんじゅの廃炉を前提に議論していくことを決めたのです。

 今から日本のもんじゅを廃炉にしても、テーマパークにすることは出来ません。もんじゅのように一度稼働した原子炉では、廃炉にしても放射能の汚染が残ってしまうからです。

 一方でドイツの政府と国民は、莫大な税金を投入し、原発も完成していてあとは稼働を待つのみという状況の中で、カルカーの稼働を取りやめ、高速増殖炉計画から撤退する決断を早くに行いました。この決断力の違いが、ドイツと日本の高速増殖炉の未来(現在)を分けた要因であったと言えるでしょう。

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